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飛び抜けた金利を付けた銀行に対して金融市場室の方から「随分高く付けましたね」と囁く可能性があるとします。
あくまで可能性ですよ。
彼らが実際にそれをやるとまずいでしょうから、やらないかもしれないけど可能性だけは残しておく。
こうすれば、突出した金利を付けようとする銀行に対して抑止力が働くという寸法です。
実際、スタート時から横一線に並びましたね。
ええ。
見事なくらいピタリと横並びのレートになった。
有識者や消費者、マスコミからは「金利が自由化したのに、なぜどこの銀行も一緒なのか」と当然の疑問が投げかけられました。
こうした声に対しては、マーケットだから必ず〓正の値に収赦していくんだという説明をしていました。
明らかに独禁法違反ですよ。
各行から大蔵省にファックスを流すと取り決めるだけで、そういう効果がある。
いずれにせよ住友と富士の金利戦争をはからずも止めてしまったことになる。
いまから振り返れば、自由な競争を阻害してひどいことをやったなあと思います。
弱者救済のための談合談合は必然的に弱い者に合わせていくことになりませんか。
そうした効果を生むことも明らかです。
例えばATMの稼働時間の問題がありました。
住友、三和は、顧客サービスの向上を目指して早め早めにシステム投資して、当時すでに二十四時間稼働させることができた。
先見性のある秀れた銀行ですから。
当然、一刻も早く動かしたい。
一方、それ以外の都銀は、情けないことに一勧も含めて二十四時間ATMを動かそうものなら、他の業務に支障を来してしまう。
だから、楽友会の場でも、揉めました。
私も一応、一勧を背負っているから、二十四時間なんかとんでもない、時間を少し延長するのもやらせないと頑張った。
地銀などはシステム整備がもっと遅れているから、こういうところも対住友、三和の応援団になる。
それでも諦めないようなら大蔵省から睨みをきかせてもらうことも考える。
為替手数料の値上げなどもそうでしたね。
自由化と言いながら全部談合で振ってるから横並びになるんです。
「コストは各行でそれぞれ違うはずなのに、なんで手数料がみんな同じなのか」とあたりまえの質問にさらされながら、後ろで握り合っていた。
公正取引委員会が調べて問題はなかったと言っても、文章に残しているわけじゃないからね。
消費者のことなど眼中になかったのでしょうね。
ATMの利用手数料等をいくらにするかは大蔵省の認可制で、銀行が提出する書類には例えば一件百円の時間外手数料なら、電気代にいくらかかるというコストが事細かに積算されています。
そうすると書類上は、銀行によって百三十円だったり百七十円だったりする。
これを顧客サービスを考えて百円に安くしたという理屈付けをするんです。
大蔵省は高いものを安くする分には認めるんです。
私は実際に申請書類を見たことがあるから、これは間違いない。
でも、そのコストがきちんと計算されていたものかどうか。
本当は八十円ぐらいのコストで、積算は虚偽なんです。
各行一律の百円という値は談合で決まっているに過ぎない切に、後付で一生懸命に理由を組み立てている。
いろんな新商品の発売でも、常に銀行は横並びでやってきた。
ある銀行が突出した新商品を出そうとすると、他行が例えば三ケ月先に同じ商品が出せるようになるまで必ず大蔵省から待った、がかかる。
つまり、先行メリットは三ケ月だけ与えるという具合に全部段取りが組まれるんです。
これは必ずしも大蔵省が自主的に判断した結果そうなるのではなくて、他の銀行が「A銀行が新商品を出すようだが、ちょっと抑えてほしい」と大蔵省に言いに行って、横槍を入れるからです。
つまり顧客の利益とは全く関係ない次元で、物事が決まっていく。
これが銀行の護送船団、談合方式の実態でした。
たしかに大蔵省が箸の上げ下ろしにまで一々口を挟んでくるのも事実ですが、同時にl銀行も大蔵省を上手に利用している。
能力の低い銀行は、ライバル行が少し先に進みそうなときには大蔵省に抑制を頼むし、実際にその意を汲んで動いてくれることもあるわけです。
銀行が個性を持つことなど論外で、大蔵省の下で相互にがんじがらめに縛り付け合っているようなものです。
だから、決算にしても、配当をどうするかという点も含めて銀行間で相談しながら決めている。
行員の給与も、やはり全銀協に人事部会というのがあって、そのウラで振り合って決めていたようです。
大蔵省の力大蔵省が持っている権力を考えたとき、許認可の場合はもちろんですが、実は届出で済むような案件でも実質的な許認可権を揮われたりする。
つまり大蔵省に届出をして、本来、無条件に受理されるはずのものが現実には受理されない。
どういうことかというと、役人が机の上に置きっぱなしで意図的に受理しないんです。
そう、絶対受理しないということがある。
当時の第一勧銀が、印紙代の節約になる一括手形方式という新商品を考え、たまたま日経新聞の一面で取り上げられたことがあります。
ところが大蔵省に事前相談していなかったために、逆鱗に触れてしまって、認可対象の商品ではなかったにもかかわらず闇に葬られそうになったことがあると開きました。
大蔵省の担当者が恥をかかされたというわけです。
しかも、その後、一勒全体が報復に遭うような恰好になり、例えば当時パリ支店の認可書類を出していたんですが、担当者の机の上でどんどん他の書類の下に置かれてしまって全く通過しない。
その担当者がいる間は徹底的に意地悪をされ、彼が異動した途端にスムーズに処理されるということがあったということです。
全銀協の業務部会時代、大蔵省との実際のやりとりはどういうものでしたか。
大蔵省からよく貰ったのはメモ書きです。
銀行局の課長補佐あたりから一片の紙切れを渡され、そこには「こういうふうにして欲しい」と要点がちょこちょこつと書いてある。
二十年以上も前ですが、ワープロかタイプで打ってあり彼らは筆跡を残さないようにしていた。
正式の通達ではもちろんなく、何の権限もないメモなんですが、実際は絶大な効力を発揮するわけです。
六行のメンバーでそのメモ書きを見ながら、大蔵省の意図はこういうことかと掛酌し、その日のうちに他の都銀はもちろん、農協や末端の信組といった隅々にまでそれが伝わるというシステムでした。
この大蔵メモを銀行が岨噂して作ったメモが、他の金融機関に伝達されマスコミにも流れるんですね。
考えてみれば、大蔵省にとっては非常に都合のいいシステムだったと思います。
だって自分たちは何の責任も取らなくてよく、ちょっと一こと一言えば全ての金融機関がその意を汲んで動き出すわけだから。
大蔵官僚には、銀行のいわゆるMOF担(大蔵省担当)がそもそも張り付いているわけです。
両者の関係も、ほとんどが東大出身者だから年次で呼び合ういわば仲間みたいなもので、官僚からすれば意を伝えるのに非常に便利で楽なわけです。
こうした大蔵省銀行局の官僚が数人で、実際に現場レベルでわれわれとやり取りする課長補佐などは一人か二人で、全国の膨大な金融機関を全て牛耳っているわけです。
大蔵省と銀行の関係をマクロで見ると、「経済の五五年体制」の問題があります。
戦後、高度成長期を迎える過程で大蔵省の主計局は赤字国債を消化していかなければならなくなり、そのために銀行局あるいは証券局が金融機関の首根っこを押さえることで国債消化のシンジケートが組織され、欲しくもない国債を勝手に買わされるような仕組みができた。
こんなことをやっている国は日本だけです。

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